インボイス制度の導入が間近に迫っています。10月1日からは、請求書や領収書に登録番号を記載することが必須となります。登録番号の管理や記載事項の確認は、消費税の税額控除に直結する重要な業務です。そのため、事前に準備をしっかりと行うことが必要です。では、具体的にどのような準備をすべきでしょうか?ここでは、インボイス制度に対応するために、10月までにやるべきことをリストアップしてみました。

やること1 自社、他社から発行される請求書記載事項の確認体制の整備

10月1日以降に発行される請求書には、以下の項目が必ず記載されていなければなりません。
1. 登録番号(登録事業者のみ)
2. 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
3. 税率ごとに区分した消費税額等
これらの項目が欠けている場合、その請求書は消費税の計算で税額控除ができなくなる可能性があります。そのため、自社から発行する請求書はもちろん、他社から受け取る請求書も都度チェックする必要があります。このチェック作業は人間の目だけでは大変です。会計システムや管理システムを活用して、記載事項の正確性や完全性を確保しましょう。また、自社発行の請求書に記載事項に誤りがあった場合、取引先に迷惑をかけることになります。登録番号や税率などを間違えないように注意しましょう。

やること2 自社、他社から発行される請求書、領収書の登録番号の管理の徹底

10月1日以降は、他社から発行される請求書、領収書に記載される登録番号が正しいものでなければ、その請求書・領収書で消費税上税額控除ができません。登録番号は国税庁が公開している「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できます。しかし、毎回このサイトで検索するのは非効率的です。そこで、会計システムや管理システムを使って、取引先の登録番号を事前に登録し、自動的に照合するようにしましょう。また、システム上のAIを用いて、請求書・領収書をスキャンして登録番号を読み取り、整合性をチェックする方法もあります。会社の予算やニーズに合わせて、最適なシステムを選択しましょう。

やること3 免税事業者が10月1日から登録番号を取得するための手続き

免税事業者の場合、登録番号を取得することで課税事業者になることができます。登録番号を取得するメリットは、消費税の税額控除ができるようになることです。登録番号を取得するためには、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する必要があります。この申請書は電子申請か用紙申請のどちらかで行うことができます。電子申請の場合、当日に登録番号が発行されますが、用紙申請の場合、登録番号発行までにタイムラグがあります。そのため、10月1日からすぐに登録番号を使いたい場合は、電子申請をおすすめします。ただし、電子申請をする前に、番号管理体制や記載事項の準備をしっかりと行うことが必要です。法人の場合は、法人番号にTがついた番号が登録番号になります。個人事業者の場合は、どのような登録番号が付与されるか発行を受けるまでわからないため、余裕をもって申請する必要があります。

やること4 免税事業者が10月1日から登録番号を取得する場合、簡易課税制度を適用するかの選択

免税事業者が登録番号を取得することで課税事業者になる場合、「簡易課税制度の選択届出書」を提出することで、簡易課税制度を適用することができます。簡易課税制度は、消費税の計算を簡易的に行うことを目的とした制度で、課税売上に業種ごとのみなし仕入れ率を乗じることで納付税額を計算する方法です。前々年(個人)または前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下の場合に適用できます。
(例)
本則(売上の消費税1,000円)―(仕入の消費税800円)=200円
簡易(売上の消費税1,000円)―(売上の消費税1,000円)×※みなし仕入率90%=100円
※みなし仕入率は業種によって異なります。
上記の例のように、簡易課税を選択した方が消費税の納税額が少なくなるケースがあります。しかし、簡易課税制度にはデメリットもあります。例えば、仕入れ先から適格請求書を受け取った場合でも、その消費税額は控除できません。また、簡易課税制度を適用した場合でも、一部の取引では本則課税制度を適用しなければならない場合もあります。そのため、簡易課税制度を適用するかどうかは慎重に判断する必要があります。登録番号を取得すると同時に、簡易課税制度の選択届出書を提出することで、その課税期間から簡易課税制度を適用できます(たとえば10月の途中から提出しても、10月1日から簡易課税制度が適用されます)。自社の業種や取引の特徴に応じて、簡易課税制度のメリットとデメリットを比較検討しましょう。

まとめ ギリギリの準備はリスクあり!お早めに

インボイス制度は、消費税の計算や申告に大きな影響を与える制度です。登録番号の管理や記載事項の確認は、消費税の税額控除に直結する重要な業務です。そのため、事前に準備をしっかりと行うことが必要です。システムの導入や管理体制を会社全体で統制するには一定の時間を要します。さらに、免税事業者が登録番号を取得する場合は、専門家等に相談し判断してからの準備となることもあると思います。10月1日からの施行ギリギリの準備はリスクが伴いますので、税法の専門家やシステムの専門家などにご相談頂きながら、余裕をもって制度準備をしていきましょう。